2024/1/30 ネット右翼になった父

 

ネット右翼になった父

読んだ。めちゃくちゃ泣いた。今この本を読めて良かったと物凄く思う。本当に、このタイトルで心当たりのある全ての人に読んで欲しい。

 

うちの父も、ネット右翼だと思っていた。

自分をトランプ支持者と公言し、安部元首相の献花に暑い中何時間も並んだ。タブレットから流れるYouTubeでは私がぎょっとするような得体のしれない動画が流れている。父に政治の話をして欲しくないから話を逸らす。むしろそもそも話さない。私がまだ小学生のとき、ニューヨークで路上生活者を見て「ああいう人は自分で選んでそうしている。怠け者だ」と言った。嫌韓本がリビングに置いてあって驚いたのは中学の時だったか?「片鱗」は昔からあり、コロナで外出ができなくなってYouTubeが拍車をかけた。単身赴任していたのが帰ってくると聞いて、入れ替わるように私が出ることにした。これだけが理由ではなく、けれども確実に理由の一つだった。社交的で明るくて、「自慢のお父さんだね」と行きつけのレストランで常連さんに言われるような父。

本当に、そういう一言、二言さえ出なければ。今も。

 

著者のように、私も父に対して心を閉じてコミュ障になっている。なんなら別の理由で母にもコミュ障なので、私は「笑わない、口数の少ない娘」だ。決定的にそうなったのは社会人になってから。何を話したらいいのかわからない。自分から話せる話題がない。「私が、私が好きなものを好きであること」を両親は良く思ってないから。僅かな勇気を出す度に後悔して、諦めて、やめた。

 

タイトルに惹かれてこの本を読んで、私も同じだったとわかった。断片的な、なんなら過去のたった一度の発言をねちねちと記憶して「ネトウヨ」のレッテルを貼って遠ざけていたのは自分のほう。私が大学に行くことと、選んだ学科に何一つマイナスなことを言わなかった。休みの日はいつも台所に立って夕飯を作る。本の中でチェック項目として出て来る話題の多くを、そもそも耳にしたことがない。トランプを支持する理由も聞いたことがない。アメリカで、自動車産業で働いた経験に理由があるかもしれない。まだ存命なのだから、聞いてみればいいだけか。

 

「ネット右翼になった父」鈴木大介さんインタビュー 晩年に豹変した亡父、嫌悪感を乗り越え検証した結果は|好書好日

――改めてどんな人に、この本読んで欲しいと思っていますか?

 ネット右翼に限らず、大事に思っていた相手が、突然わからなくなってしまった人ですね。この『ネット右翼になった父』というタイトルですが、結論としてはなっていなかったと思うので、出版当初はモヤモヤしたものがありました。でも本が出てしばらくして、姉と「このタイトルで良かったね」という話になりました。親や友達がネット右翼になったと思っている人が読んでみて、実際はそればかりではない姿に気付くため。無用な分断を回避するため。そのためにも、このタイトルでよかったのかなと。

この本を読んで、今ならまだ間に合う、分断は飛び越えられるという熱い強いメッセージに胸を打たれた。この本が読まれれば読まれるほど、救われる人が大勢いると思う。悩んでいる息子・娘たちはもちろん、誤解されている父親たちも。この本が世に出て良かった。

 

***

 

この本を読み始めて間もなく、まだ「父はネット右翼では無かった」という結論に著者が至る前。晩年の父親と著者の様子を読んで「私の未来もこんな感じだろうか……何か食い止めるものは……せめてYouTubeの謎コンテンツから興味を逸らして……共通の会話の糸口……」と考え始めて、すぐに、私はもう「救世主たりうるもの」を見つけていることに気が付いた。

 

 

 

横浜ベイスターズ。

 

 

 

父は神奈川生まれで大洋ホエールズ時代からのファン。それに影響されたのか、母も私が物心ついた頃には既にベイスターズのファン。実家のテレビはケーブルテレビを契約して毎日ベイスターズの試合が夕飯中に流れ、オフシーズンはキャンプ映像が流れ、去年から沖縄キャンプに二人で出かけて行っている。「なんでそんな弱くて人気のないチームを文句言いながらずっと見てるんだ」と、ファン(?)なのに全然楽しくなさそうな二人が長年謎だった。「監督変えろ」って誰の時でもずっと言ってるし、「今何位?」って聞いてもずっと大体最下位だし。そんな二人を後目に私は一人で2003年にダイエーホークスにドはまりし、すぐに球界再編のゴタゴタで心が折れ、そこから20年空いた。

 

2023年、そして今。

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WBCをきっかけにベイスターズファンになった友達と、オリックスファンの友達が私を球場へ連れ出してくれた。「え!?ベイスターズって今こんな感じなの!?」って驚いた。DeNAに経営が移ってから、観客動員も大幅に増えて何もかもが充実して「球界きっての明るいチーム」になっていた。応援したい一番星も見つけた。

30過ぎた娘が結婚もせず子育てもせず、今度は野球に手を出したことを両親がどう思うか、ぶっちゃけわからない。呆れられるかもしれない。(特に度会くんなんて若い子に行ったから……)だからまだ「友達の影響で行ってみただけだよ」の体で少しずつ掻い摘んで報告してたけど、様子を見ながらでも、もう少し話してみようか。会話を増やしてみようか。そう思っている。鈴木大介さんありがとうございます。うちの家族はまだ間に合うかもしれません。