第164回直木賞の候補作品全部読んだよ

 

自担が書いた小説が直木賞にノミネートされたので、他の候補作品も全部読みました!!!

 

 

オルタネート

 

 

※自担(じたん)=ジャニーズのファンが「自分が特別に好きな人」を指して使う言葉。自分の担当の略。

 

というわけで、全作品読んだ感想が以下です。お納めください。

なお、順番は単純に読んだ順です。

 

 

 

長浦京「アンダードッグス」

今回の直木賞候補作の中で唯一海外を舞台とした、国家機密を巡って各国の思惑が交錯するスケールの大きな作品。世に出れば世界を大きく揺るがしてしまう重大機密入りのフロッピーを奪取するため、主人公・古葉が実行する作戦は素人がゆえに突飛。アクションシーンの連続はさながらハリウッドの超大作で息つく間もない。そんな、映像化すれば何億円かかるかわからない大作も、私たちは読書で「体験」できる。直木賞候補作一冊目として読んでよかった。大衆文学、エンタメ小説の世界の広さを知りました。 

 

アンダードッグス (角川書店単行本)

アンダードッグス (角川書店単行本)

 

 

  

芦沢央「汚れた手をそこで拭かない」

どこにでもいるような何でもない人々の、ちょっとした「愚かさ」や「うかつさ」が鋭く描かれた短編集。ひとつひとつ読み終わるごとに胸がざわつき、彼らの不幸を「自分は違う」と遠ざけてしまいたくなる。でも、本当にそうだろうか? 自分の手の汚れに、まったく身に覚えがない人っているんだろうか? うっかり。出来心で。そんなつもりはなかった。誰にでも起こりうる、だからこんなにも怖くなるのだ。

 

汚れた手をそこで拭かない (文春e-book)

汚れた手をそこで拭かない (文春e-book)

 

 

 

伊与原新「八月の銀の雪」

 いつもコンビニでレジを打ってくれる、あのベトナム人の女の子。リクルートスーツに身を包んだ就活生、カフェで聞こえてくる大きな声の自己啓発。電車で肩身が狭そうにしているベビーカーとお母さん、再開発でみるみる変わっていくご近所。どれも言わば私たちの生活風景で、その景色の中にある誰かの悩みや痛みが繊細に描かれている短編集。大人になって、いつの間にか萎びてしまった「知りたい」という単純な好奇心を、もう一度育ててみたい。そう思わせてくれる、優しくて愛しいお気に入りの一冊になりました。

 

八月の銀の雪

八月の銀の雪

 

 

坂上泉 「インビジブル

舞台は昭和29年の大阪。新米刑事の新城が、初めて挑む殺人事件の捜査で組まされたのは何もかも正反対な男・守屋だった。「キャリアとノンキャリ」という王道の対比に加え、時代柄いくつもの立場や経験の違いがそこに加わる。「自治体警察」と「国家地方警察」という組織の違い、「軍隊経験」という数年の年齢差が生んだ経験の違い、「東京と大阪」という土地の違い。読み始めは難しいと思った時代背景も、全てが物語の重要パーツだった。ぐいぐい引き込まれて一気に読了。めちゃくちゃ面白かった!!

 

インビジブル (文春e-book)

インビジブル (文春e-book)

 

 

 

西條奈加「心淋し川」

 舞台は江戸時代の「心町(うらまち)」と呼ばれる、長屋が建ち並ぶ一角。そこで暮らす人々の生活はけして豊かではないものの、みんなそれぞれの「人生」を抱えて懸命に生きている。短編連作で描かれるそれぞれの人生は、「いい時」もあれば「わるい時」もあり、紆余曲折を経て心町へたどり着く人もいれば、心町で育ち出て行こうとする人もいる。最終章の、心町の差配・茂十の物語を読むころには、心町の住民は皆ご近所さんのような、顔なじみのような存在になっている。あの人が元気そうでよかった、あの子は大きくなった。読み終わった後もなお、心町の暮らしはいつまでも続いていくような気がする。

 

心淋し川 (集英社文芸単行本)

心淋し川 (集英社文芸単行本)

 

 

 

 

 

全部読んでみての感想 

楽しかった!! 

今回の候補作品は見てのとおりバラエティ豊かで、一冊読み終えて次に移る度に「これまで読んだのと全然違う!」と違いを楽しめるのがすごく面白かったです。たとえば同じ短編集でも「八月の銀の雪」「汚れた手をそこで拭かない」は正反対と言っていいぐらいで、それがこうして同じ候補作品として並んでいるのが、直木賞って幅広くて面白いなぁ…!と思いました。普段の自分だったら選ばないような本ばかりだったし、読んでみたら面白すぎて大興奮!ということもあったし、この経験まるごと新鮮で面白かったです。 

候補作を読んだ他の人の感想を見るのも、これから色んな媒体で出る受賞作予想も楽しみ。選考会まで残り一週間を切りましたが、直木賞という祭り、全力で乗ります!!!加藤シゲアキさん、直木賞ノミネートおめでとうございました!!

 

 

 

 

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