リリウム観劇(3回目)の気付き


※※※ネタバレ注意※※※
リリウムをこれから見に行く予定のある人は読まないでーー











定刻と同時に照明が落ち、客席は暗闇に包まれた。何も見えない真っ暗な世界に、一呼吸を置いて突如大輪の花が咲く。暗闇に浮かび上がるたくさんの百合。アーチのようにステージを囲んで咲き乱れるその様は絶望的に美しく、儚く、禍々しい。息を飲んでステージを凝視していると、すぐに、その中央に人影が倒れていることに気が付く。その影はゆっくりと、およそ人間らしからぬ所作でーーまるで死者が蘇生するようにーー起き上がり、ライトを背負って立ち上がった。逆光で、眩しくて、顔が見えない。物悲しいオーケストラとピアノの旋律に乗せて彼女は歌い始める。誰だ?リリーじゃない。この声はスノウ?いや、違うーーー シルベチカだ。

「Forget me not 私を忘れないで」

両サイドから歩き出てきた全キャストと共に祈りの歌を歌う。
目に見えるもの、耳から入るもの、全てが美しすぎて目眩がする。
とんでもないものを見にきてしまった。とんでもなく美しく、とんでもなく贅沢な世界に足を踏み入れてしまった。これを観たらもう、元の世界には戻れない。




初観劇の衝撃をなんとか覚えておきたくてこんなポエムめいたものまで書いてしまった…。
明日はリリウムの東京公演最終日。反響が反響を呼んで非ハロオタ層にまで評判が広まって行くのが本当にいくら喜んでも足りないぐらいにうれしい。もっと言葉を尽くしてリリウムの良さを語っていれば、更に多くの人に届いたのかなぁ…ちょっと後悔。



話変わって本題の、リリウム観劇3回目の気付きまとめ。
6/12(木)、7列目左寄り。初めての一桁列は何と言ってもまあ顔が良く見える!すごい!Blu-ray画質だ!!!おかげで今まで見えなかった細かな表情までよく見えて、疑問だったことがすとんと腑に落ちたり、新たな気付きがたくさんあった。

以下、自分なりにたどり着いた解釈を箇条書きで。


◆シルベチカのこと
シルベチカが歌う庭師はファルスを彷彿とさせるけれど完全にファルスのことではない。
この物語が好き=シルベチカにとって命とは限りあるから尊く、そして自然の中を巡るものである。永遠を生きることはこの自然の摂理に反するから望まない。
ただしシルベチカは勿忘草の女の子=死は受け入れたけど忘れられることは怖い。
塔から飛び降りたのはキャメリアの心にずっと残っていたいからであり、シルベチカのエゴ。彼女自ら演出した悲劇的な死だった。


マリーゴールドのこと
どうしてスノウを憎んでいるのか?彼女が繰り返し言う「スノウがリリーを不幸にする」とは?
最初は過去の記憶の残骸(記憶リセットを繰り返す中で、スノウがリリーを不幸にしたのを目撃したことが潜在意識として残っている)か、これから迎える結末の暗示かと思っていた。けれど台詞改変(『あなたを服従したい』がなくなって『あなたを独り占めにしたいの』だけになったこと)と、リリーが走り去った後も恍惚の表情で自分(リリーの温もり)を抱きしめていたのを見て、彼女もまた狂っているのだと気が付いた。(今までは遠いのもあって、リリーが逃げ去ったことに悲しみ自分を抱きしめたのかと思ってた)(ありがとう7列目)
マリーゴールドがああいうことを口走るのも、全ては「リリーを独り占めにしたい」という気持ちから。スノウはリリーに一番近しかった。自分からリリーを取ってしまう、だから殺したいほど憎い。
繭期の症状の一つに「思い込みが激しくなる」というものもあるし(プリンセスマーガレットが最たる例)、スノウから離すためだけに「不幸になる」などと言っていたのだ。




そんでこれは解釈じゃなくて感想なのですが

◆ファルスのこと
3回目の観劇にして初めて涙が流れたんだけど、その涙の引き金になったのがファルスでした。
記憶をリセットされたみんなが次々と立ち上がって偽りの日常に還っていく時、それまで狂気じみた笑みを浮かべていたファルスが一瞬、とても、とても悲しい顔をした。なんて悲しい表情をするんだ、って途端に胸が苦しくなった。TRUMPを見てから行ったというのもあって、ファルス=ソフィ・アンダーソンの悲しみが殊更響いた。
ファルスの3000年の寂しさは誰にも埋められないんだ。



あーあーあーーーーー
ほんと工藤凄すぎる…………。