NEWSを好きになった日

 

「人生経験として、ジャニーズのコンサートに行ってみたいんだよね」

それは池袋の安い居酒屋で飲んでいた時だった。どんな文脈だったかはもう忘れたが、何の気なしに言ってみたその言葉を友人は聞き逃さなかった。当時モーニング娘。が好きでアニメが好きでうたプリが好き*1だった私は、うたプリを通じてジャニオタの友人と知り合ったのもあり、長年興味の薄かったジャニーズという存在へ興味が湧いていた。なんとなく面白そうだと思った番組を見てみたり*2、なんとなく気になったライブDVDを買ってみたり*3したが、やっぱり一度は実際に熱気を体験してみたい。そんな気持ちだったので、本当にグループはどこでもいいと思っていた。だから友人が「来月にNEWSの東京ドームがあるから行こう」と言ってくれた時も、「NEWS」ということより「来月の東京ドーム」という点を念頭に二つ返事で了承した。誘ってくれた友人含め、「NEWSなら絶対楽しい」とジャニーズを知る友人らがその場で太鼓判を押してくれたことは妙に覚えている。彼女たちの中にNEWSのファンは一人もいないのに、そのように言われるということはきっと間違いないのだろうとぼんやりと思っていた。

 

二つ返事で東京ドームが決定した後、詳細について調べた私は軽い気持ちで了承したことを早々に後悔した。「来月のNEWSの東京ドーム」は、NEWSの結成10周年を記念したイベントだったのだ。いくらジャニーズに疎い私でも、そういった「何周年」の記念イベントがいかに大切かはわかる。「イッテQの手越くんとevery.の小山くんがいたはず」程度の知識で参加するのは失礼だと感じ、出来る限り勉強して臨むことにした。手始めにTSUTAYAでアルバムNEWSを借り、何度も聴いた。overtureが格好良かったので、これで始まるコンサートに行けることにわくわくした。一番気に入ったのは、手拍子が難しそうな4+FANという曲だった。数年前に錦戸くんと山Pが脱退したことは知識としてあったので、この歌詞を今のNEWSが歌っているのはきっとファンの人にはとても嬉しいことだろうと思った。アルバムの中で唯一知っていたチャンカパーナは「踊れないと浮くだろう」と思い、インターネットの海で見つけた手越くんと加藤くんの振付講座を見ながら練習した。振付の中の「男女」の概念が覚えられなかったが、なんとかそれっぽい感じになったので満足した。

こうして楽曲の予習をしながら、NEWSのメンバーのことを知るためにフォロワーさんから教えてもらったブログ記事を読んだ。4人各々の一万字インタビューの内容をまとめたというそれを順に読んで、一人ずつ彼らのことを知っていった。そして、何番目に読んだかはもう忘れたが、加藤くんの記事を読んで枕が濡れるほど泣いた。テレビにたくさん出てドームでコンサートをやる人気者の彼らはみんな「生まれながらのアイドル」で、アイドルである自分になんの疑いもないキラキラした人たちだと思っていた。それなのに、こんな風に苦悩に塗れていて、共感できる人がジャニーズにいるなんて。そうして枕を濡らしつつ全員分を一通り読んで、「好きになるなら小山くんだろうな」という気持ちで東京ドームへ臨んだ。

 

 

NEWSのコンサートは、見るもの全てが新鮮だった。グッズがかわいい。さすが女の子相手に商売をしているジャニーズだ。入場しただけでサイリウムとラバーブレスを貰った。お土産をくれるなんて太っ腹だ。さすがジャニーズだ。東京ドームって広い。女の子ばっかりたくさんいる。ペンライトってずいぶん光が弱弱しいんだな。みんなNEWSって呼んでる。歓声がすごい。「We are what you’ve been looking for(我々こそ、あなたが探し求めていたものです。)」overtureの言葉に胸が高鳴った。ひょっとしたら、本当にそうなのかもしれない。 

未だに、一曲ごとに感想を述べられそうなほど鮮明にあの時の気持ちを覚えている。友人が探してくれたチケットは2階スタンドの真ん中らへんで、野球のネット越しに見下ろしたNEWSのコンサートは音ズレも酷くて、東京ドームは広くて遠くて、でも楽しかった。チャンカパーナは見よう見まねで踊れたし、4+FANのクラップも難しいけどちゃんとできた。「エヌ!」とか「イー!」とか言うのは追いつかなかった。知らない曲でフードを被っていた加藤くんが、カメラに抜かれながらフードを脱いだ。一万字インタビューの印象からあまりにもかけ離れたそれに、「嘘つき!!自分のことかっこいいって知ってるじゃん!!」とパニックになった。あんなに「10周年」というワードで意気込んでいたのに、突然流れたハッピーバースデーのメロディに「誰かメンバーが誕生日なのかな?」とずれたことを思っていた。みんなが「ハッピーバースデーNEWS」と歌ったので「そういうことか!!」と己を恥じた。加藤くんの「みんなNEWSのこと好きだからここに来ちゃったんだよね?」には苦笑いをして、NEWSのファンじゃないのにごめんね、と思った。

「今日はコンサートじゃなくてイベントだよ」と教わった通り、歌って踊るだけでなく色んなコーナーがあったのでNEWSのことをもっと知ることができた。手越くんはサッカーが好きなんだ。増田くんはミニ四駆が好き。加藤くんは写真展をやってたの?小山くん、ファンの人にスーツをあげちゃうなんて…すごい。「NEWS」の4文字を頭文字にした4つのコーナーの最後、「Special Song」をNEWSが歌った。彼ら自身で作詞作曲した「愛言葉~てをひいて~」という新曲だった。2階席で本人たちを見るには遠いのでずっとモニターで歌詞を見ていたら、「ファンのみんなありがとう」的な歌詞ではなく、可愛らしいラブソングだったことに驚いた。文字で追っていたおかげで「986日々」「4合わせ」という歌詞の意味がすぐにわかり、さすが作家だなぁと感心した。

本編の最後、NEWSは一人ずつステージに立ってファンへ向けた挨拶をした。手越くんが「NEWSという船は何度も折れそうになった」と言った。増田くんも泣きながら、「もう東京ドームに立てないのかと思った」と言った。私が思っていたジャニーズの当たり前が、本当は全然当たり前なことではなかったと知った。最後は小山くんからプロポーズされ、「初対面なのに…」と戸惑った。「明日からも頑張れるように」と最後の曲を歌ったNEWSの優しさに胸を打たれた。

イベントが終わって東京ドームを出て、「NEWSのコンサートがあったらまた絶対に来たい」「私も私の大好きなアイドルを大切にしたい」という二つの想いが私を占めていた。特に二つ目は、想い想われるNEWSとNEWSのファンの相互の関係に対する憧れの気持ちだった。また、「NEWSは絶対にこれからもっと売れる」とも確信していた。こんなに素敵なグループを世の中がほっておくはずがないと思った。それぐらい魅力的な存在に思えた。

 

 

さて。翌日から、私は今まで通りの生活に…戻れなかった。

楽曲を聴いたときからずっとハスキーでセクシーだと思っていた加藤くんの声をもっと聴きたいと思い、ラジオを探して延々と聴いた。周りにNEWSのファンは一人もいないので、一人で孤独にNEWSのことを手探りで掘り続けた。何かの拍子に「NEWS RING」なるものの存在を知り、調べまくってやっとそれが会員制公式サイトのコンテンツだと知った*4。ブログが読めるなんて最高だと思ってすぐに入会した。東京ドームから一週間後のことだ。

そうして一人で延々とNEWSのことを掘りながらも、「今更ジャニーズにはまるのか?」と苦悩は続いていた。既に大学も卒業して来年から社会人。元から別のジャンルのおたくなのに、さらにジャニーズ。いくらなんでも抵抗感がある。苦悩しながらも手元には東京ドームの二日後にぽちった「美しい恋にするよ」があり、本屋で見かけて「増田くんが言ってたやつだ」と買ったソロ表紙のWinkUpがあった。イベント直後でハイになっている可能性も捨てきれず、というかあまりにも熱が上がりすぎているのを自分でも感じ、この熱はきっと二週間ぐらいしか持たないだろうと思った。二週間で冷めてしまう熱を公にするのも気が引けたし、今更ジャニーズというのも照れくさいし、NEWSのことは全然ツイッターに書かずにコソコソと一人で壁打ちした。「美しい恋にするよ」はすごく見たかったが、見てしまうと私が見れる「4人のNEWS」が尽きてしまうので見終わるのがもったいなくて毎日少しずつ見た。毎日少しずつ見ながらラジオを聴いて雑誌を読んでNEWSのことを掘っていって…。そして「加藤シゲアキさんが気になるなら絶対にこれ」とブログでお勧めされていた2012年の+act mini.のインタビューを読んだ。

「本当に、やっと、この5年ぐらい考え続けて悩んだものが全部捨てられたかな。NEWSも、これからもっともっと大変だと思うんだけど。でも俺、ずっと言ってるんだけど、NEWSって面白いでしょ?って思う。4人になっちゃったんだったら"4人でよかった"って言わせるのが目標だし、チャンカパーナも色んな人に応援してもらって、ライブもSOLD OUTになって……今、こんな状況になって、ジャニーズに興味ない人から見ても結構面白いんじゃないかな、と。そこは胸張って、"NEWS面白いですよ。おすすめです"って俺は今言えるかな。それまではさ、自分がNEWSに貢献できてない気持ちもあって"おすすめです"って言えなかったんだよね。みんなは面白いんだけど俺がちょっと……というか。本も書けて結果こうなったけど、今は"これからNEWSは面白いよ!"って、"これからファンになればいいのに!"って凄く思うんだよね。あははは!」

(凄く良いですね(笑)。今もしジャニーズのグループを好きになるなら、ね?)

「そうそう、ジャニーズに興味があるんだったら……NEWSを好きになったら楽しいよ!っていう気持ち。やっと、そう言えるかな。」

 

 この言葉が最後の一押しとなり、翌日に「美しい恋にするよ」を最後まで見た。ライブ終わりの挨拶で加藤シゲアキさんが「もう、ダメだと思いました」と涙を零した瞬間、「もう無理!!!!」とベッドに倒れ込んだ。もう無理。抗えない。この人を、この人たちを好きにならずにいられない。私は泣いていて画面の中のNEWSも泣いていて、最後の曲を歌い切るとファンファーレのような音楽と共にサプライズの花火が上がった。それはハッピーエンドというよりも、新たな冒険の始まりのように見えた。後にも先にも、この時のような「抗えない」とてつもない引力を何かに感じたことはない。NEWSの引力は本当に本当に凄まじかった。なお、「美しい恋にするよ」は次のDVDが発売されるまで半年間毎日見た。誇張ではない。

 

 

「二週間で飽きる」とは一体なんだったのか、あれからもう295週間も経ってしまった。そして出会った時から毎日ずっと、NEWSのことが大好きだ。今日もこのブログを書くために10周年のDVDを見て、あまりにも好きすぎて泣いてしまった。好きにならずにいられないと、あの日以上に思う。NEWSに出会えてよかった。NEWSを大好きになれる自分で良かった。あの日からずっと幸せをくれる4人が、今日も幸せであることを願っている。

 

 

 

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*1:ST☆RISHの聖川真斗担

*2:A.B.C-Zのオーストラリア縦断

*3:V6のmusicmind

*4:ありがとう知恵袋