区の施設で映画の上映会をやっていたので行ってきた。
梅切らぬバカ
あらすじ
山田珠子は、息子・忠男と二人暮らし。毎朝決まった時間に起床して、朝食をとり、決まった時間に家を出る。庭にある梅の木の枝は伸び放題で、隣の里村家からは苦情が届いていた。ある日、グループホームの案内を受けた珠子は、悩んだ末に忠男の入居を決める。しかし、初めて離れて暮らすことになった忠男は環境の変化に戸惑い、ホームを抜け出してしまう。そんな中、珠子は邪魔になる梅の木を切ることを決意するが・・・。
学校とかで上映して欲しいような良い映画だった。ドランクドラゴンの塚地さん演じる「ちゅーさん」が絶妙な可愛さで、加賀まりこさん共々素晴らしい演技だった。結局ちゅーさんはグループホームを出てお母さんと暮らす家に戻ったけど、一番の不安だった「お母さんが亡くなった後」のことは先送りとなった。何か万能の解決策が生まれてめでたしめでたしじゃない、映画冒頭よりほんのちょっとだけ良い環境になって(お隣さんご一家と仲良くなって)終わった。あの場所に本当にグループホームを建てるのかな。お隣さんが許したとしても、住宅密集地だし隣にマンション建ってたし、同じように地域住民とギスギスするかも。映画を見た私にできることって、「反対運動をする側にならないこと」以外にないのかな。それでもちゅーさんは「かまいません」って言ってくれそうだけど。
94歳のゲイ
タイトル通りのドキュメンタリー映画。大阪の西成で暮らす長谷さんを数年に渡って撮影している。昨年おじいちゃんが93歳で亡くなったので、94歳の長谷さんのお元気さにびっくりした。出かけるときは電動四輪車みたいな車輛に乗って移動するけど、自分で歩いて、一人で生活できている。ゲイであることを長年隠して、誰とも交際せず誰とも結婚せずずっと一人で暮らしてきたらしい。特濃の牛乳をたくさん買って飲んでいて、やっぱりそういうところが良いんだろうか。
長谷さんだけでなく色んな方が映画の中に登場した。ケアマネージャーの梅田さんはすごく優しい素敵な方で、ご自身もゲイだから長谷さんの気持ちがわかると言っていた。家族みたいなバディみたいなご関係だったけど、梅田さんはドキュメンタリーの撮影期間中に急性心不全で亡くなってしまった。驚いた。ケアマネージャーとして働きながらLGBTQのワークショップ等も開催して、とても精力的に活動している方だった。長谷さんを若い方と引き合わせたり、孤独にさせなかった。
長谷さんは「若い頃に自分と同じような(ゲイの)人と出会わなかった」「そんな人が他にいるのかわからなかった」と言っていた。少数派で社会の中で見えない存在だった人たちに、光を当てて声を拾ったのが「薔薇族」という雑誌だった。出版社の社長で編集長だった伊藤文学さんのインタビューがあったけど、「いないもの」とされていた人たちに声をあげる場所を提供したことがすごい。誇張抜きで、多くの人の命を救ったと思う。インターネットの台頭によって廃刊してしまったけれど、文通相手募集コーナーに通常の雑誌では考えられないほどのページ数を割いたりして、ある種のコミュニティだった。でも、高校生が薔薇族を万引きして捕まり、両親へゲイだとバレることを恐れて飛び降り自殺してしまったという悲しい事件もあった。この悲劇は同性愛者を追い詰める社会に責任があると、薔薇族で総力特集を組んだ。こんなに長年戦ってきた方がいたんだ。昔と比べると随分生きやすい社会になったと当事者の方は皆言うけれど、2015年にもアウティング被害者の大学生が飛び降り自殺した事件があった。インタビューされていたゲイバーの男性は「今は差別も無いですし」と言っていたけど、本当に心からそう思えてるのかな? あ~~早く同性婚が認められて欲しい。道のりが長すぎてそこがゴールみたいな感覚になっちゃってるけど、本当はそれが最低限だし出発点な気がする。
長谷さんは昨年の秋に亡くなった。長谷さんと会った若い世代の方々は、長谷さんの存在そのものが光なのだと言っていた。自身が中年期に差し掛かり、ロールモデルがいないから長谷さんに会ってお話ししてみたいと東京から尋ねる人もいた。この映画を通じて長谷さんは、ずっと誰かを救い続けるのかもしれない。