『魔法少女はなぜ世界を救えなかったのか』ペク・ソルフィ、ホン・スミン
タイトルと表紙のインパクト大。図書館で選書されていたのを見つけた。韓国の本だけど、テーマがテーマなので日本の少女カルチャーの批評と言ってもいい。『赤毛のアン』などの少女文学に始まり、現代のプリキュアまで網羅されている。ディズニープリンセスがこれまで辿って来た変化とか、消費者としての”少女”とか、プリキュア(ニチアサ)のおもちゃで稼ぐ戦略とか……興味深いテーマが多すぎる。ぜひ読んで欲しい。自分が読んでて刺さったのは、最後の方に書かれている、著者が女性アイドルを応援することに罪悪感を覚えているという章。日本のアイドルを好きになって握手会などに通うになった著者は、アイドルから「あなたのように細くなりたい」と言われて以降会いに行けなくなったそう。はーちん(元モーニング娘。尾形春水)がYoutubeで告白した現役当時の痩せ願望についても本の中で触れていて、全くひとごとでいられない。(私は羨ましがられるような体型ではないけど) ファンはアイドルに健康的でいて欲しい、美味しいご飯を食べて欲しいって言うけど細くないと人気が出ないよね、みたいな指摘……耳が痛い 耳が千切れる。違うんだ本当に……本当にダイエットして欲しくないんだ……でも「綺麗になりたい」ってがんばること自体を否定したいわけじゃないんだ……。実は先日のハロコンで、過剰なダイエットをしているように見えてしまったメンバーが複数いた。彼女たちに、そんなことをしなくていい、あなたは元のままで十分素敵だって伝えたい。伝えたいけど、伝えたところで……逆に悩みの種を増やすのでは? 結局、この本での結論は「少女たちに変化を促す前に大人たちの価値観が変わらないといけない」ということだった。ならば早く変わらなければならない。今変わらないといけない。焦っている。
『産む気もないのに生理かよ!』月岡ツキ
数年積んでいたのをやっと読み終わった。生理が重い日になると読みたくなった。月岡さんはDINKs(仮)の方なので独身の自分とはちょっと立場が違うけど、「産む気がない」という点では一致していて、共感する部分がた~~~~~くさんあった。同じこと考えてる人他にもいたんだ!っていう安心感。こういう本が読める時代でよかったな。本をきっかけにポッドキャストも聞いた。月岡さんの話をもっと聞きたくなった。
『雲と鉛筆』吉岡篤弘
「偶然」でこんなすごい本と出会えるんだから、書店って無限の可能性がある。すごい。この出会いそのものに感動した。
新宿で時間が空いたので暇つぶしに入った紀伊国屋書店で、ちくまプリマ―新書の棚を眺めていた。ティーン向けとはいえ「新書らしい」タイトルが並ぶ中、この「雲と鉛筆」は新書らしからぬタイトルで浮いていた。光って見えた。手に取ってみても帯も無いし、開いてみても「これは新書なの?小説なの?」という不思議な内容。手がかりを求めてあとがきを読み、「なんだかこの本には私にとって大事なことが書いてある気がする」という予感と高揚感が止まらない。迷いなく購入した。
家に帰ってお風呂に本を持ち込み、湯船に浸かりながら声に出して読み始めた。斎藤孝先生の『遅読のすすめ』という本の中で、”声に出して読んでみよう”という章があった。実際に声に出して読んでみるのは初めて。でも、この『雲と鉛筆』は絶対に声に出して読んだ方がいい。絵本の読み聞かせや、教科書の音読に似ている。声に出すことで、自分に聞かせているのかもしれない。ほんとうに大切なことが書いてあった。ぼろぼろになるまで一生読みたい。
『涙に国籍はあるのでしょうか―津波で亡くなった外国人をたどって』三浦英之
朝日新聞の記者の方が書いたルポ。読むきっかけとなったのはこの記事。
先日の衆議院選を前に市井の人たちにインタビューをした記事。本文も写真もめちゃくちゃ良い。気になって記者プロフィールを見に行ったら受賞歴と著書がずらりと並んでいて、その中でタイトルが気になったこの本を図書館で借りてきた。せっかくなので3月11日に読み始めた。
東日本大震災で亡くなった外国人の正確な人数をこの国では誰も把握していない。自治体と警察発表で人数が違うし、そこに問題意識もない。このことを知った三浦さんは、津波で亡くなった外国人がどんな人だったのか知るために取材をした。前から思っているけど、記者の仕事って「記事を書くこと」ではあるんだけど、”書く作業”の前がすごく時間がかかる。取材する対象者を探すことがまず大変だし、その作業って実は「新聞に掲載された津波犠牲者の名前すべてに目を通す」みたいな、地道な作業の積み重ねだったりする。そうした経緯も含めて本書には書かれていて、記者の仕事ってすごい……と改めて思った。
この本の中で、津波でお母さんを亡くした中国人の青年が取材を受けていた。日本人男性と再婚したお母さんに呼び寄せられる形で来日していた彼は、お母さんが亡くなったことで在留資格を失い、出国準備中という扱いになった。正規の方法で日本に来て、懸命に働いていたのに。津波でお母さんを亡くした被災者なのに。血も涙もないルールだ。この国ってこんなに冷たいんだ。悲しい。彼を助けたいと本気で動いた周りの人たちの存在が救い。もっと優しい国になって欲しい。
『令和その他のレイワにおける健全な反逆に関する架空六法』新川帆立
図書館でレコメンドされていて、表紙のインパクトの強さに惹かれた。めちゃめちゃ面白かった!!!目次だけでも面白い。
ジャンルとしてはSF。架空の法律が施行されたパラレルワールド的な”レイワ”の日本を描いた短編集。この法律が絶妙で、施行の経緯も含めて書かれているので妙に「ありそう」と思ってしまう。たとえば自家製の酒造りが承認された世界(第二章)では、美味しいお酒を造るのが良い嫁とされ、酒造りを教えるお教室があったり、市役所に相談課があったりする。描かれている社会問題は現実社会を風刺していて、こういうのかなり好き。虚構新聞が好きな人とか好きだと思う。最後の麻雀の話は、麻雀知ってたら抜群に面白いんだろうな……と思った。新川先生もシゲアキさんと麻雀してるのかしら。
『約束の果て―黒と紫の国』高丘哲次
久しぶりにファンタジーを読んだ!おお~~~!!!面白い……!!日本でファンタジーを書くと西洋ではなく中国っぽい世界観になるのが興味深い。十二国記もそうだし。日本を舞台にしたファンタジーっていうと、妖怪とかになる気がする。でっけえスケールの物語にはでっけえスケールの大陸が必要なのかな。久しぶりにファンタジーを読んだのでこれまでと違う部分の脳みそを使っている感じがした。文章を読んで、脳内に繰り広げられる映像の壮大さといったら。普段現代社会にどっぷりな分、それを忘れられる世界観がとてもよかった。読んでる間ずっと面白かった。(←これかなりすごいこと) もっとファンタジー読みたくなった!
『アクセシブルデザインの発想——不便さから生まれる「便利製品」』星川安之
オンライン読書会に向けて読んだ。面白かった~~!!アクセシブルデザインというのは、たとえばシャンプー容器の側面にあるギザギザのように、商品をより多くの人が使えるようになされている工夫のこと。著者の星川さんは、アクセシブルデザインという考え方が世に広まる以前から、障害のあるこども向けのおもちゃを開発していた。おもちゃから始まった取り組みがどのように業界をまたいで広まっていったのか、知れば知るほどじんわり温かな気持ちになる。たとえばボタンのオンオフがわかるように凸を付けること、たとえばオセロの面によって手触りを変えること。普段意識しないことにも、言われてみればなるほど~!という工夫がたくさんあった。この本を読んでから身の回りの品を見ると新たな発見があると思う。これらの工夫は全ての人のためだし、私たちひとりひとりが参加することでもっと社会は暮らしやすくなっていく。前を向いて明るい気持ちになれる読書だった。
『カフェーの帰り道』島津輝
すごく楽しみにしていた本。島津先生の一作目である『たすきがけの二人』を読んだことがあって(直木賞候補作全部読むのとき)すごく面白いけど一作目だからまだ直木賞は無いかな~と思った。案の定その時は受賞を逃してしまったけど、二作目の今作で受賞された。ほら!!だから言ったじゃん!!!面白いんだって!!
今作『カフェーの帰り道』は約100年前の東京を舞台に、とあるカフェーと縁のある人たちの人生を描いた連作短編集。一編ごとに時代が移り変わっていき、空気が変わっていくのを追体験する。戦争ってほんとクソ!クソだよ~~~!!!とはいえ本当はあまり身構えずに読んで欲しい。とても読みやすいし、個性的な登場人物たちが生きた時代を一緒に覗き込んで欲しい。
『増えるものたちの進化生物学』市橋伯一
めっちゃくちゃ面白かった!!!買ってから数年寝かせてしまったけど、読んだタイミングとしては良かったかもしれない。特に『産む気もないのに生理かよ!』の後でよかった。
この本を買ったきっかけは東洋経済に載っていた著者インタビューだった。このインタビューがすごく面白くて、当時の自分の悩みにずばずば新しい視点で斬り込んでくれた。著者の市川先生はタイトル通り進化生物学者で、「私たちはなぜ生きているのか」という問いに生物学の視点から答えているのがこの本。もう1ページ目からめちゃくちゃ面白い。生物というのは「物理現象」である。よく歌詞とかにある「生まれてきたことには意味(理由)がある」とか、そういう「自分は何かを為さなければならない」という思い込みに「いや、そんなものはないですよ」と淡々と綴る。元も子もない書きぶりがユーモアがあって面白い。私のように「生まれてきた意味」を背負うのが重い人は救われると思う。あと、よく「産まないこと」に対して「生物としての本能が」とか「自然の理に反する」とか言う人もいるし、そうじゃなくても「自分の代で家系が途絶えるのはご先祖に申し訳ない」みたいなプレッシャーを抱えたりもするけど、そういうことにも市川先生は丁寧に「その“本能”の方がそもそも時代遅れである」とか「子孫を残さなくてもここまで繋いできた命が無駄になるわけじゃない」ということを学者の目線で伝えてくれる。下手なスピよりよほど救われる。悩んでない人も、めちゃくちゃ面白いのでぜひ読んで欲しい。ちくまプリマ―新書だから読みやすいよ!!
『幹事のアッコちゃん』柚木麻子
アッコちゃんシリーズの三作目。これで完結かな? これまでのシリーズの集大成という感じで、アッコちゃんこと黒川敦子の人間味、不完全さが描かれていた。完璧超人に見えていたけど、欠点はあるし万人から好かれているわけでもない。等身大のアッコちゃんこそ魅力的で、最後に読者にこんなにアッコちゃんを好きにさせてお別れだなんて……ひどいよう……という感じだ。続編があったら嬉しいけど、ないほうが余白があって美しいかな。今も世界のどこかでアッコちゃんはパワフルに生きているんだと思う!
『人種差別をしない・させないための20のレッスン アンチレイシストになろう!』ティファニー・ジュエル
読書会の課題本だったので読んだ。差別のある社会では「差別をしない」ことだけでは不十分で、積極的に差別を取り除く「アンチレイシスト」になろうという本。アメリカのティーン向けに書かれた本で、フルカラーイラストが盛りだくさんでテーマの割に楽しく読める。自分で取り組むワークショップ的なものもたくさんあるので、読書会向きだった。ただ、繰り返すけれど「アメリカのティーン向けに書かれた本」なので、どうしても前提や事例が日本社会と違いすぎて、とっつきにくさはあった。例えば「白人警官が黒人に拳銃を向けていたらあなたはどうしますか?」という例は、日本だとなかなか想像できない。そういう難しさがちょいちょいあった。
読書会ではペアになって感想を話したけれど、私とペアになった人はこの本に不信感を抱いたらしかった。この本の中で問題だと思った書きぶりについて指摘した後、「あなたはそう思いませんか?」と聞かれた。正直、全然上手く答えられなかった。がっかりさせたかもしれない。『差別はたいてい悪意のない人がする』を勧めた。読んでくれるかな……。「上手く話さなきゃ」と思うと言葉が出なくなる。帰って来てからずっと、ああいえば良かったこういえば良かったと反省している。










