こんな魔法のような夜に-10年ぶりのBUMP OF CHICKEN

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昨日、色々あって10年ぶりにBUMP OF CHICKENのライブへ行ってきた。この「色々あって10年ぶり」を説明するためには「BUMP OF CHICKENと私」というとんでもなく重くて長くてどうでもいい前置きが必要になるので省く。とにかく10年ぶり、具体的に言うと2008年2月のホームシップ衛星@幕張メッセ以来のBUMP OF CHICKENだった。

10年というブランクは実を言うとかなり怖かった。セットリストを見たら知らない曲がたくさんあったし、離れていた間にBUMPがなんか凄いことをたくさんしていたことも知っていた。Mステに出た。紅白に出た。ライブ会場は全国のドーム、さらにスタジアム。楽曲もキラキラしている。ライブ会場もなんかキラキラしている。この10年で私は変わったかもしれないし、BUMPも変わったかもしれない。「ふーん、今はこんな感じなのね。昔好きだったなぁ…」そんな気持ちになってしまう可能性を否定しきれなくて怖かった。15年前、あんなに心の拠り所で命の恩人だったBUMPの楽曲が全然響かない大人になってるかもしれない自分が怖かった。ツアーファイナルであり結成22周年の記念日を何も考えずに取ってしまったけど、自分よりこのライブに相応しい人がたくさんいる。罪悪感を抱きながら、ライブに行くことが決まってから初めて購入した最新アルバム(と言ってもリリースは2年前なのだが)を聴きながらさいたま新都心へ向かった。さいたま新都心に着いた頃、歌詞の一節が突然刺さった。それが「流星群」という曲名だということを確認して、今日聴けたらいいなと思って会場へ向かった。入るようなバッグも無いのに「このままではBUMPが好きで来た人に見えない」という自意識でタオルだけ購入し、400レベルの席へ向かった。「できれば座って見たいなぁ」と思っていた私のチキンぶりを見抜いていたかのように席は「公演中は立ち上がらないでください」の注意書き付きの最前列で、「これは私のために用意された席だ」と確信した。私はここに居ていいのだと安心した。

そんな感じで数十分後、物販で購入したタオルは私の涙で濡れていた。私は本当にウェットなおたくで、即泣き王選手権上位に入るような泣き虫なのだが、まさか「こんばんはBUMP OF CHICKENです」の時点で既に泣いているとは思わなかった。自分でもよくわからないのだけど、チャマの顔を見た瞬間に「チャマだ!!」と思って涙があふれた。特別チャマが物凄く好きだったという訳でもないのに、彼の笑顔の安心感はすごい。

 

BUMP OF CHICKEN TOUR 2017-2018 PATHFINDER

2018/2/11(日・祝) さいたまスーパーアリーナセットリスト

1.GO
2.天体観測
3.ray
4.宇宙飛行士への手紙
5.Ever Lasting Lie
6.記念撮影
7.pinkie
8.花の名
9.涙のふるさと
10.You were here
11.アンサー
12.分別奮闘記
13.宝石になった日
14.虹を待つ人
15.fire sign
16.リボン

enc1.ガラスのブルース
enc2.流星群
enc3.新曲

 

アリーナにも椅子があるんだな、オールスタンディングじゃないんだな。The WhoのQuick Oneは流れないんだな。光る腕輪すごいな。映像綺麗だな。最初から金テープと紙吹雪も飛ばしちゃうんだ。すごいな。変わったところはいっぱいあるけど、でもBUMP OF CHICKENだ。GOの紙吹雪、宇宙の真ん中にいるような天体観測、最初のギター3音ぐらいで「Ever Lasting Lie!!」と身を乗り出した自分の謎の条件反射。大好きな、花の名と涙のふるさと。10年前にあった曲は全て「これは自分のための歌だ」と思うほどめちゃくちゃ胸に響いた。BUMPを毎日聴いていたあの頃とは全然違う自分なのに、「好きだった」ではなく「好きだ」が溢れた。相変わらずガリガリに細くて猫背で歌う藤くんが少し歌詞を変えて歌う度に「今日の私のための歌だ」と思った。

本当はずっと、BUMPを聴くのが怖かった。一番辛かった時期と余りにも密に結びついているから、聴いたらあの地獄のような毎日が蘇ってしまうんじゃないかと怖かった。でもライブ中や終わった後にあの頃を全く思い出さなかったと言えば嘘になるけれど、それよりも結局「BUMPの曲が好きだ」という気持ちの方が何倍も勝った。10代の自分だったから好きだったのではなかった。大人になった今でも、毎日が辛くない今でも、ちゃんと自分に響いた。それが嬉しかった。

曲の合間に何度かあった、MCと言って良いのかもよくわからないトークの中で、BUMPが22周年を迎えたことと同じぐらい、さいたまスーパーアリーナ公演が10年ぶりであることに触れられた。10年ぶりというキーワードが本人たちの口から何度も出ることに驚いたし、そのおかげで嬉しい言葉がたくさん聴けた。特にチャマは「初めて来た人は(昔の曲で)『この曲知らないな』って曲があるかもしれないけど新曲のつもりで聞いてね。久しぶりの人は『この曲知らないな』って曲があったらそれは新曲だから!!笑 新曲のつもりで聴いてねと言ってくれて、優しくて本当に嬉しかった。藤くんは、「こんなに饒舌な人だったっけ!?」というほど一生懸命喋っていて驚いた。10年ぶりのさいたまスーパーアリーナであること、「あれ?この曲10年前も歌ったな」と思い出す瞬間があること、10年前にあった曲も無かった曲も今ここで歌えていることが本当に嬉しいこと。22周年記念日とか、特にキリのいい数字でもないし、それなのにスタッフがさいたまスーパーアリーナを抑えてしまって、記念日とかそんなでもないと本気で思っていて…でも客席の皆の顔を見たら、22年やってきて本当に良かった。バンドを組んで良かったと思った。そんなことを沢山話していた。10年で丸くなって饒舌になったのか、昨日だけたまたまハイだったのか分からないけど、本当に好きだなぁと思った。アルバムを出さずに自分たちでなんとなく「ライブやりたいね」とツアーをしたこと自体22年で初めてだったそうで、そのおかげで新旧織り交ぜたセットリストだったらしく、やっぱり私が帰ってくるタイミングは今しかなかったなと思った。本当にすべてが上手く出来すぎていた。

BUMPっていいなぁ、本当にいいな。一曲終わるごとに「終わらないで欲しい」と願っていたけれど、そんな訳にもいかず「最後の曲です」と始まったアンコールの2曲目。最後は10年前に無かった曲だなと聴いているうちに、二時間前にさいたま新都心駅で「あっ」と思ったフレーズが飛び込んできた。

こんな魔法のような夜に ようやく君と出会えた

たとえ君を傷つけても 見つけたかった

(流星群-BUMP OF CHICKEN

なぜこのフレーズが刺さったのかはわからない。でもこのライブに来るにあたって「聴きたいな」と思った近年のBUMPの曲を、よりによって一番最後にこんな風に歌われてしまったら敵わない。2018年2月の夜に、またBUMP OF CHICKENを好きになった。私はもう一度BUMPと一緒に生きていけると、理屈じゃなく思った。

 

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「流星群」が終わり3人が捌けた後、やっぱり饒舌でどこかハイになっているような藤くんは「ごめんね、時間ある?ちょっと聞いてくるから、待ってて」と言ってスタッフの元へ走り、再び戻ってくると「いま曲を作ってて、メンバーに聴いてもらった曲もあればまだ聴いてもらってない曲もあるんだけど、聴いてもらってない曲をやります。上手く歌えるかわかんねぇけど」と言って新曲を少しだけ弾き語りで聴かせてくれた。次のライブはきっと、この未完成の新曲が収録されたアルバムを引っ提げたものになるんだろう。活動も不定期な彼らが「次」があることを約束してくれたことが嬉しかったし、絶対に絶対にまた来たい。きっと23年目の新規のような気持ちでワクワクしながら会いに行けるから、その日が来るのを心待ちにしている。

 


BUMP OF CHICKEN「GO」LIVE MV from BD/DVD「STADIUM TOUR 2016 "BFLY" NISSAN STADIUM 2016/7/16, 17」